芋虫
今週のお題「いも」
田舎から東京へ出て来た頃
人々の歩くスピード
静かな満員電車
キッチリ整えられた髪型
高級ブランドのバッグや時計
ガラスの高層ビル群
標識にない暗黙のルールの数々
全て完璧なのに何かいちばん大切なものがない
頭の中がぐちゃぐちゃになった
公園のベンチで家で作ってきた弁当を食べた
アスファルトの地面を芋虫が這っている
サナギになる場所を探しているのだろう
蝶になるのか蛾になるのかわからない
自分を見ているようだった
「お前、そんなとこいたら潰されちまうぞ」
つまんで緑の中へ放してやった
自分もまだ芋虫だ
皮肉にもいちばん足りてないもののオブジェがあった
いつかサナギになって脱皮したらいちばん足りてないものを振りまくものになろうと思った。