見ないようにしてきたもの
ココロの中に見ないようにしてきたものがある。
3歳頃の記憶
パパとママが喧嘩をしている
薄紫色のカーペットの手触りを指でなぞりながら喧嘩早く終わらないかなと我慢している
大声で泣いても相手にされなかった
絨毯の少しゴワゴワした感触
キッコーマンの醤油差しが転がって来て目の前の絨毯に溢れる
醤油は絨毯に染み込んで茶色いシミを作っていく
声を出さずに泣いているのに気がつく
ただ絨毯の醤油のシミを見続ける
億劫になって寝転がった
帰りたいなぁと思った
自分の家にいるのにどこか別の場所に帰りたいと思った
パパとママはいつものパパとママじゃなくて知らない人のようだ
怖かったけど我慢した
シミがカバにみえて可笑しくなって笑った
怖くても悲しくても笑えるんだと思った
大人になってなんでこんなことを思い出したのかわからない
ココロの中の3歳の自分を抱きしめた
狂ったように大きな声で泣き出した
泣くだけ泣いたら気が済んだのか笑い出した
そんなもんだな