ツワブキ
今週のお題「大人になったなと感じるとき」
ばあちゃんが生きていたころ実家には小さな庭があった。オレはばあちゃん子だったから庭先で花の手入れをするばあちゃんによくついて回った。
小さな庭だったが花の種類は多かった。
レンギョウ、ムスカリ、スイセン、カイドウ、チンチョウゲ、コデマリ、アジサイ、ムクゲ、サルスベリ、カンナ、ホウセンカ、ヒャクニチソウ、ヤマブキ、ナンテン、ケイトウ、シュウカイドウ…
子供の頃の記憶力はすごいものだ。
四季折々に花が咲いた小さな庭はばあちゃんが他界したあと改築のときガレージになった。
久しぶりに実家に帰った。
「今夜は鍋にするから白菜とってきて。勝手口の脇に置いてあるから」
勝手口を開けると小さな倉庫の上に白菜が積んであった。便所サンダルを履いて白菜を取ろうとした時だった。
小さな倉庫の影にツワブキが咲いていた。
改築のときも生きのびたのだろう。
「ばあちゃん、ただいま」