「うちゅうひこうしになりたい」
引き継ぎのパートさんが遅刻して、また保育園のお迎えに遅れる。
早く行かないとまた昴がコウキくんにいじめられる。コウキくんちは、三人兄弟で上の小学生のお兄ちゃん達とはケンカばかりして近所でも評判が悪い。コウキくんママはかなり放任主義で文句を言おうと思った事もあったが、日々の子育てに疲労困憊の様子で何も言えなかった。
今頃泣かされてるかもしれない。
こんな時に限って渋滞にはまる。
やれやれなんとか保育園に到着。
「昴、待たせてゴメンね」
大きな声で中を伺う。
昴とコウキくんが教室の床に寝そべって一冊の絵本を読んでいた。
「いまいく。コウキ、またあしたな」
「スバルくん、あしたもね」と、コウキくん…
飛んだ風の吹き回し
車の助手席に座り、自分でシートベルトを締める昴を見ながら聞いた。
「コウキくん、なかよしになったんだ?」
「うん、コウキはね、まだ字が書けないんだよ だから教えてあげてたの。こないだの七夕さまのたんざくもぼくが書いてあげたんだよ」
「なんて書いたの?」
「ぼくと同じこと」
「宇宙飛行士になりたいって?」
「そうだよ そしたらコウキくんママがすごいよろこんだんだって。コウキがじぶんでかいたみたいになっちゃて、だからぼくに字を教えてって」
コウキくんママの幸せそうな笑顔が目に浮かんだ。