赤ワインとイカスミパスタ
今週のお題「感謝したいこと」
「だいぶお疲れのようですね」
仕事帰りの電車の中、アリーバがオレに話しかけてきた。
アリーバは俺が巨大なUFOを見てから頭の中に話しかけてくるようになった宇宙の存在。
「年末になってくると仕事が忙しくなってホント疲れるんだよね。寒くなってくるし」
「忙しさに呑まれてしまってはあなたらしく無くなります。寒くなったからと言ってココロまで冷えてしまったらいけませんね」
「そうだね。だから自分を取り戻そうと思うんだけどつい、イライラしちゃったりして…」
「そういう時はありがとうゲームをするといいですよ」
「ありがとうゲーム?」
「はい。やり方は簡単です!見たこと感じたことに“ありがとう”と感謝するだけです。やってみましょう」
「この満員電車に?」
「電車のおかげで仕事場から家までスムーズに帰れること、ありがたくないですか?」
「そうだね、ありがたい。歩いたらすごい距離だもんね!じゃ、つり革は?」
「電車が揺れても大丈夫です!」
「なるほど…この丸みが手に優しいね。誰が考えたんだろう?感謝。じゃ、前にいる寝てるおじさんは?」
「ふふふ、平和の象徴でしょうか。実はこの方、安全な薬品の研究をされている凄い方です。」
「そうなんだ…見かけによらないなぁ。感謝。じや、あの作業着の青年に感謝。」
「彼らのような方々が安全な道路を作ったり、建物を作ったりしてます。そして彼は将来…、おっと未来の話はいけませんね」
電車が俺の降りる駅に到着。ホームに降りる。自動ドアが優しく閉じる。
「お気づきですか?電車の音、静かになってることに?」
「ほんとだ。感謝だね。そして階段にありがとう。」
「階段がなかったら大変ですよ」
信号機、アスファルト、街灯、コンビニ、冷たい風、雨…。
「このダウンジャケットと傘がありがたいね」
スーパーはありがとうだらけだ。
誰かが育てた野菜や果物、ありがとう。
新鮮な状態で届く魚やお肉、ありがたい。
一から作ったら大変な冷凍食品の数々、ほんとに手軽でありがたい。
イカスミのパスタがチンして食べられる。
「わたくしそろそろ失礼しますね。ちなみにそのパスタにはブルゴーニュのピノ・ノワールがオススメです。値がはりますがその価値はあるかと。ではでは」
「またね、アリーバ。ありがとね」
沢山のワインが並ぶお酒の売り場。
アリーバが教えてくれたワインを探す。
撫で肩の瓶の赤ワインだった。
いつも買う安いワインの3倍の値段だけど今日は自分へのご褒美に買って帰ろう。
いつのまにかココロが暖かくなってる。